バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

14 隠し事

仕事を終え、買い出しも済ませた兼森は帰路についていた
一週間経った今でも、あの隊長の悲しそうな顔が忘れられない
彼は、目の前に敵として現れたかつての友人をどう思っているのか
怖くてそんなことは聞き出せなかった

人ごみから逸れ、住宅地に入る
なんだか今日は人ごみにもまれるのが嫌だったのだ
ふっとため息をひとつ吐く
考えるのさえ嫌になってきていた

人形を倒すことに対する抵抗はなくなっていた
ただ、現れる人形はあまりにも人間に似ており、自分がまるで人間を殺しているような錯覚を覚える
あれは人間の敵だ。そう言い聞かせても払しょくできない何かがあった

そもそも隊長は何かを隠しているようでもあった
第4部隊への転属を彼は素直に喜ばないし、ただ黙ってその場を見ているようであった
隊長は何を隠しているのか。ささくれ立ったその疑問が晴れるのはいつだろうか

両手に持った荷物が重みで指に食い込んでくる
体力も筋力も軍人だから当然あるのだが、今日の重みは憂鬱な気分も相乗し苦しかった

「兼森」
不意に、そんな声が聞こえた
誰の声かは分からなかったが、兼森はなんとなく振り返る

その瞬間だった
彼の目の前が、突然真っ暗になったのは