バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

16 絶対時計

兼森は自分の目を疑った
開けたホールのような場所に出た彼は、目の前に大きな時計を見る
それは、鎖で針を雁字搦めにされ、動く気配が見られなかった

「何だ、これは……」
兼森は呟いた
その時、不意に後ろから足音が聞こえ、兼森は振り向いた

白髪の長髪を一つに編み、狐のような糸目でこちらを見る男
隊長が「鹿目」と呼んだ男その人がいた
「知りたいかい、青年」

「これは『絶対時計』。世界の時を司る時計だ」
兼森の返事を待たず、鹿目は語りだす
「こうして鎖で縛ってるから、今は機能してないけどね」

「どうしてこんなことをしたんだ」
兼森の質問に、鹿目は笑いながら答えた
「世界への復讐のためだ」

「三年前の飛行機事故、君は覚えているかい」
鹿目は兼森がこちらを見ているのを気にかけながら前に歩いていく
「原因は過労だった。無理に仕事をさせたが故に多くの命が消え失せた。僕の両親も同じように」
鹿目は表情を変えない
「だが、経営者も政府も十分な対価を渡してくれなかった。それがとても許せなくてね」

不意に、ぐるりと鹿目は振り向き、両手を広げた
「ならば、僕が変えなきゃならない。そう思って、一度「時」を止めたんだ」
それが間違っているかなど、兼森には分らなかった。理解できる頭を持ち合わせていなかった
だが、三年続く逢魔ヶ刻を見続け、それが間違っていることだとはなんとなくわかった
「それは、まちがってると思う、僕は」

鹿目はやれやれと首を振り、両手を打った
「分かり合えなくて残念だよ。君にはここで死んでもらう」
ホールの外からぞろぞろと人形がわきでてくる
ハロとスイも武器を構えてこちらを見る
自分はここで死ぬのだろう。兼森はそう覚悟し、目を閉じた
しかし

響き渡る斬撃音と銃声。兼森は思わず目を開けた
第4部隊の隊員が、そこにいた