バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

18 三年ぶりの月

外はすっかり暗くなっていた
三年ぶりの夜だ。三年ぶりの月が上っている
兼森は後ろを向いた
隊長と一緒に鹿目が出てくるのが見えた

「いやぁ、こうなるとは思ってませんでした」
聞き覚えのある声にそちらを向くと、ハロとスイがそこにいた
「お前ら、壊されたんじゃなかったのか」
「わりとしぶといですよ、僕は」
「……」

兼森は握ったライフルを向ける気にはなれなかった
首謀者が人形を使っていたとはいえ、「人形」そのものはこの争いには一切関係ないからである
その様子を見て、スイが一歩前に出た
「その銃、抜かないんだな」

「私も、今この時になってしまっては、刀を抜く気にはなれない。多分、他の人形もそうだ。私たちに、人間に対する恨みはない」
スイは温度のない手で、兼森の手をとった
「お願いがあるんだ。どうか、私たちをこの世界で動かしてほしい」

「……」
兼森は一つ頷くと、隊長のもとへと向かった
「隊長、お話が」
「奇遇だね、僕もだ。先にいいかな」

「君は、これから先、どうしたい?」