バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

3 幼馴染

ハシモトは一件の家を訪れていた
彼のもとで仕事を斡旋してもらっている『赤髪の殺人鬼』、もといルソーの家である
ハシモトとルソー、そしてルソーの姉であるフブキは歳の離れた幼馴染で、何気なく集まってしまうのである

「また来てんのかよ、この骨は」
食器を運びながら同居人のアイラは呟いていた
ハシモトは小さいテーブルをはさんでルソーと話し合っている
「いいじゃない。こっちが断る理由はないわよ」
「そうは言うけどよ……」

「私もあまり賛同はできません、フブキさん」
テーブルを拭いたふきんを持ってきながら、草香は言った
「彼はいつもルソーさんを危険な目にあわせています。私としては、納得のいかない事象です」
「うーん、そこは私も反対したいところなんだけど、幼馴染のよしみもあるし」

「幼馴染、ですか?」
草香は首をかしげる。500年前から稼働しているアンドロイドである草香にとって、幼馴染とは聞きなれない言葉らしい
「私が小さいころから、気の利くお兄さんとして私やルソーと遊んでくれたのよ。ねー、『お兄ちゃん』!」
フブキが突然話題をふり、ハシモトは資料を取り落としそうになる

「『お兄ちゃん』ってお前、何年前の話だよ」
「えー、いいじゃない、たまにはそう呼んだって」
「過去のことは振り返りたくねェんだよ。察しろ」
ハシモトはそういって立ち上がった

「それじゃ、ルソー。あとは任せたぞ」
「はい。終了次第裏事務所に向かいますので、そのつもりで」
ハシモトは満足そうに頷き、家を出ていった

「……相変わらずね、ハシモトは」
「相変わらずでないと、こちらが心配します」