バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

9 追いかけっこ

大きな音を立ててゴミ箱が転がった
ハシモトは大通りを目指して歩を進めているつもりだが、たどり着く前に『匠』に追い返されてしまう
この時ばかりは自分の体力のなさを呪うほど疲弊しだしていた

「おい」
後ろから『匠』がとびかかってきた
ハシモトは寸でのところでかわすが、その勢いでバランスを崩して倒れこんでしまった

「誰も殺すなんて言ってないだろ。ちょっとついてきてほしいんだよ、こっちは」
「うるせェなァ。そんなこと言って殺す気満々なくせに」
ハシモトは立ち上がるが、その首元に『匠』ののこぎりが突き付けられる

「なんだ、ビビってやがんのか? 俺たちの拠点を潰しておいて」
「そんなこと言って、実は復活してるだろ、「カルミア」」
ハシモトは『匠』をまっすぐ睨み、言葉を続けた
「俺を捕まえて吐くだけ吐かせたいなら、その武器はしまってもらいたいね」

ハシモトは素早く拳銃を取り出すと、『匠』の足元に数発放った
思わず一歩引く『匠』。ハシモトはそれめがけて思い切り体当たりをかまし
パワーのない体当たりだったが『匠』をよろめかすには十分で、ハシモトはそのまま大通りへとかけていった

「……ちっ、逃しちまったか」
『匠』はとりおとしたのこぎりを拾い上げながら大通りを見た
「いいさ。お前の首は、誰もが狙っているんだからな」
にやにやと笑いながら『匠』は言った