10 逃げ延びた先で
ぜぇぜぇと息を吐きながらハシモトは裏事務所の近くまで逃げ延びた
頬にかかる汗をぬぐう。外はまだ寒いというのに
「あんののこぎり野郎、覚えてろよ……」
小さく呟き、ハシモトはよろよろと歩を進めだした
「貴方は死んでしまいます」
そう言った『預言者』の言葉を、ハシモトは振り払う
冗談じゃない。自分は生きていかなければならないのだ
「あの時」みたいに、死にたくない
「……っ!」
不意に背後に気配を感じ、ハシモトは思わず振り返る
しかし、そこには何もいない
ハシモトは前に向き直り、再び歩きだす
「……いない」
ぽつり、一つハシモトは吐く
「いない、いないんだ。『亡霊』なんて、いやしない……」
それはまるで呪詛のように、ハシモトはぶつぶつと唱えだす
「こりゃ、今夜は眠れそうにねェな……」
ハシモトは言った