バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

13 震え

「『水仙』にお会いしたんですか?」
ルソーはコーヒーを口に含んでから言った
手元にはいつもの資料。ハシモトはそれをばさりとルソーの前に置いてから返した
「よく殺されずに済みましたね」
「敵意はなかったみたいだしな」

「ハシモト、それで、『水仙』は何と」
カルミアに俺が狙われてるらしい。理由は思いつかないがな」
ハシモトの言葉にルソーは眉間にしわを寄せる
「ある意味で必然かもしれません」
「必然?」

「今まで僕たちは、主にハシモトの指示で動いてます。その司令塔がいなくなると、混乱する」
ルソーはカップを置き、ハシモトの方を見上げた
「なおかつ貴方はブローカーです。向こうにとって有益な情報も持っている可能性がある」
「買いかぶりすぎだ、そりゃ」
ハシモトは言いながらコーヒーを飲むが、わずかに震えていた

「……ハシモト、今、何を考えてますか」
「え?」
ハシモトはそこでようやく、自分の震えが止まってないことに気づいた

「貴方のことです。カルミアに狙われようとも堂々としているはずですが」
それとも、とルソーは続けた
「「亡霊」のことですか」

「……なんでもない」
ハシモトはもう一口、コーヒーを飲んだ