バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

19 初心者殺人鬼の危険な誘い

「それにしてもびっくりしたわ。貴方がそこまで追い詰められてるなんて」
食器を重ねて流しに運びながらフブキは言った
無論、ハシモトのことである
「俺だって、この時期になってそんな問題に直面するなんて思わなかったっていうか」

「『イブ』には『ネズミ』が年中ついてるし、『猿回し』はそもそもカルミアのお抱えだから何かしら守られている」
「しかし、雇用形態を作っていないあなたは、誰もいないときに襲われる可能性があると」
ルソーの言葉にハシモトは頷いた
「そもそも雇ったところで年中いないだろ。『篝火』も『殺戮紳士』も一人が好きなタイプだし、お前には姉貴がいる」

「となると、また今日のように襲われる可能性があるわけですね」
「流石に事務所に乗り込んだりはしないだろうと信じてるけどよ」
「わかりませんよ。この前のマヨイさんの時みたいに乗り込まれる可能性は無きにしも非ずです」
草香が声を上げた

「……じゃあ、やることは一つなんじゃない?」
フブキが流しから戻ってきてから言う
「やること?」
「貴方が護身術を学ぶ必要があるってこと。つまり」
「「人を撃つ」覚悟を作らなければならない、と」
「その通り」

フブキは指を立てて言った
「じゃあ、とりあえずハシモト、私を撃ってみてよ」

「はァ!?」
その場にいた全員が驚く
「お、おい、冗談だろフブキさん」
「冗談でそんなこと言うと思ってる? 私もね、この世界に足を踏み入れちゃったんだから、強くなりたいのよ」
フブキは左胸を抑える。ずるずると嫌な音を立てて包丁が取り出された

「マシンガンじゃ融通が利かないから、拳銃からね」
「……は、こりゃあ本気だな」
ハシモトはゆるゆると立ち上がると、内ポケットから拳銃を取り出した

「殺す気で来なさい。私もそうする」
「あんたに振り回されることになるなんてな」
ハシモトは拳銃を構えた