20 変わるということ
「あっ」
少年の声が飛ぶ
道端に林檎が一つ転がる
それが足にぶつかる前に彼はそれを拾い上げ、目の前に差し出そうとして気が付いた
「『ネズミ』さん」
「『弁護士』さん……?」
『ネズミ』は買い出しに出ていた
『イブ』が一人だが、彼女は彼女なりに防衛術を持っているそうなので、あまり待たせなければ大丈夫らしい
「『薬師』に絡まれて、よく無事でいられましたね」
「あの人は武器に頼りきりの弱い人です。払うのは問題なく行えました」
「そんなことより、『ハシモト』はあれからどうなりました?」
『ネズミ』の質問にルソーは僅かに視線をあげる
「彼なりにこのままではいけないと思ったようでしてね。今頃僕の「仲間」と経験をつんでますよ」
「よかった、死んではいないのですね」
「正直、あの『ハシモト』が動くとは思わなかったですよ、僕自身」
ルソーはため息交じりにそう言う
「命の危機を感じ取ったとはいえ、人は簡単には変われないと思ってたのですが」
「「簡単」には変わりませんよ」
『ネズミ』の声にルソーは反応した
「簡単じゃない。だから、変わろうという強い意志があれば、変われるんです」
『ネズミ』はいつもの怯えた表情だったが、目には安堵すら浮かんでいた
「『ハシモト』は、変われます。僕が保証します」
「……あの人と一緒にいる期間は、僕の方が長いはずだったんですけどね」
ルソーは『ネズミ』の頭を撫でた
「そういうのでしたら信じましょう。あの人は、変われる」
送りますよ。ルソーはそう言って先を歩き始めた