バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

20 変わるということ

「あっ」
少年の声が飛ぶ
道端に林檎が一つ転がる
それが足にぶつかる前に彼はそれを拾い上げ、目の前に差し出そうとして気が付いた
「『ネズミ』さん」
「『弁護士』さん……?」

『ネズミ』は買い出しに出ていた
『イブ』が一人だが、彼女は彼女なりに防衛術を持っているそうなので、あまり待たせなければ大丈夫らしい
「『薬師』に絡まれて、よく無事でいられましたね」
「あの人は武器に頼りきりの弱い人です。払うのは問題なく行えました」

「そんなことより、『ハシモト』はあれからどうなりました?」
『ネズミ』の質問にルソーは僅かに視線をあげる
「彼なりにこのままではいけないと思ったようでしてね。今頃僕の「仲間」と経験をつんでますよ」
「よかった、死んではいないのですね」

「正直、あの『ハシモト』が動くとは思わなかったですよ、僕自身」
ルソーはため息交じりにそう言う
「命の危機を感じ取ったとはいえ、人は簡単には変われないと思ってたのですが」

「「簡単」には変わりませんよ」
『ネズミ』の声にルソーは反応した
「簡単じゃない。だから、変わろうという強い意志があれば、変われるんです」
『ネズミ』はいつもの怯えた表情だったが、目には安堵すら浮かんでいた
「『ハシモト』は、変われます。僕が保証します」

「……あの人と一緒にいる期間は、僕の方が長いはずだったんですけどね」
ルソーは『ネズミ』の頭を撫でた
「そういうのでしたら信じましょう。あの人は、変われる」
送りますよ。ルソーはそう言って先を歩き始めた