バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

21 一人の遠出

「おい、本当にいいのか」
ライターと名瀬田は裏事務所の出入り口にいた
ハシモトはひらひらと手を振る
「ああ。お前たちに手を煩わせるつもりはない」

「そんなこと言ったって、君は戦闘力は皆無なんじゃなかったのかい」
名瀬田が挑発的に言うが、ハシモトは気にしていない
「人並みには戦えるわ、あほ」

「何があるか分からないからな。迅速に帰ってこい。じゃなきゃ、俺たちを呼ぶんだな」
「もっとも、すぐには来れないけどね」
ライターと名瀬田の送り出しを受け、ハシモトは歩き出した
今日は表の仕事で少し遠くまで出向かなければならなかった



「なぁ、これでよかったのか?」
アイラが外を眺めながら言った
「なぁに? ハシモトのこと?」
フブキが洗濯物を取り込みながら返す

「あいつ、思い詰めていたじゃねぇか。自分はもうすぐ死ぬんだって」
「そういえば、そんなことも言ってたわね」
フブキが空を仰ぐ。黒い雲が空を覆っていた
「でも、あの人のことだもの。きっと大丈夫よ」

ね、お兄ちゃん
フブキはそう呟き、洗濯物を抱えて家に上がり込んだ