バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

字書地獄2「雨の買い物」

しとしとと雨の降る午後
屋敷の窓から外を眺めながらルベルトは左足をさすっていた
「ったく、嫌になるぜ。低気圧が続いて痛みが止まらねぇ」

「ルベルト様、お呼びでしょうか」
そこにそう問いながら、彼の友人であるレンブラントが入ってきた
「悪いな、レン。丁度鎮痛剤を切らしてしまったんだ。買い物ついでに買ってきてくれないか」
「構いませんよ。いつもの薬箱の中のやつで間違いないですか?」
「ああ。よろしく頼む」

屋敷を出たレンブラントは黒い傘をさした
傘をささないといけないが、さほど激しいわけでもなく、ただしとしとと雨が地面を鳴らす
レンブラントは買い物のメモを一瞥すると、胸ポケットにしまい込んで歩き出した

街はいつもと変わらず活気に満ちており、雨にもかかわらず人の往来が激しかった
果物屋で立ち止まりお菓子に使う果物を選別していると、ふいに視界の端で何かが動いた
何だろう。そう思ってそちらを見ると、小さなカエルがこちらを見ていた
眺めていると可愛く見えてきて、レンブラントはカエルを指で撫でた
カエルは満足そうにゲコと鳴くと、雨の中へ飛び込んでいった

粗方買い物を済ませ、あとはルベルトの鎮痛剤だけとなった
ところが、この時期に体を痛めてる者が多いのだろう。やや遠くまで出向いたが手に入らない
どうしたものか。レンブラントは考え込む

そこに、一人の子供が駆け寄ってきた
緑色のレインコートを着た子供だ
レンブラントは「どうしたのかな?」と首をかしげながら問いかける
子供はもじもじとしていたが、やがてポケットから小瓶を取り出すと、レンブラントにそれをあずけて逃げてしまった
手の中の小瓶を見ると、探していた鎮痛剤だった



「ふーん。子供が、ねぇ」
一連の話を聞いたルベルトが呟く
「ま、今は深いことは考えないほうがいいさ」
「……そう、ですね」



「夕顔と薄荷」番外
雨の買い物