バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

字書地獄5「透き通った空」

「流石にこの季節ともなると寒いな」
ナツミが呟く。赤くなった指先に息を吹きかけてこする
「そりゃあ、真冬だもの」
シンが笑いながら返した

ここ数日、白い雲が空を覆ってすっきりしない日が続いていた
雪でも降ればいいのにとも思ったが、まだその時期ではないらしい
いつもならばQモンスターを片端から倒しているが故にぽっぽしている体だが、ただの登下校では温まらない
ナツミはホルダーから鉛筆を取り出しては仕舞いを繰り返してそわそわしていた

「クリスマスも正月も越えたんだ。これから何もない分、Qモンスターに集中できるでしょ」
シンの言葉に「えー」とナツミは悪態をついた
「つまらないではないか」
因みにえんぴつ党では(主にナツミの提案で)クリスマス会もやったし、正月三が日も出ずっぱりだったとはここだけの話である

「そんなことよりさぁ」
シンはすっと指をたてると、ナツミの視線を誘導しながらまっすぐ空をさした
「いい天気だとは思わない?」

シンの言う通り、数日ぶりの青空だった
先の分からないほど透き通った空は、放り投げられるとどこまでも吸い込まれそうなほど青い

「冬の空は不純物が少ないというからな」
「そうやってすぐ知識にこじつけるの、やめた方がいいと思うよ。ナツミの悪いとこ」
シンは笑顔を崩さずに返した

「よーし、今日も鉛筆推しを進めていこうではないか!」
「相変わらずで微笑ましいよ」
ナツミとシンは学校にむかって歩きだした



「アンサーズ」外伝
透き通った空