バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

異端嫌いの部下

「鬼才さーん」
雨の降るある日のこと
梨沢は傘を忘れた鬼才を迎えに来ていた
何度か顔を出したことはあるが、一人で自警団まで足を運ぶのは初めてである

鬼才は時間を少しだけおいて奥から出てきた
横に一人女性を従えている
「やぁ、梨沢君。わざわざありがとう」
ヘテロの皆も心配してるぜ。早く帰ろう」
傘を渡しながら梨沢は鬼才に言う

その時、横の女性がじろじろとこちらを見てきた
「……な、なんだよ」
梨沢は軽く身を引く
女性は梨沢の顔を見ると、言葉を返した
「あんた、鬼才さんに変なこと吹き込んでないでしょうね?」
「は?」
「こ、こら、下上さん……」
遠慮気味に鬼才は止めるが、下上と呼ばれた女性は止まらなかった

「いいこと、鬼才さんに変に近づくのはやめて。ただでさえ「異端」なのにいらついてるっていうのに、これ以上そっちに染まられるのはこまるわ」
流石の梨沢もむっとし、下上に言葉を返した
「俺たちだって好きで「異端」やってるわけじゃねぇよ。警察なのに配慮もできないのか、お前は」

「理由がどうであれ、私、下上蜜柑は貴方たちを、「異端」を許すつもりはないから」
下上は一度梨沢を睨みつけると、踵を返して奥へと引っ込んでいった

「……なんだよあれ、むかつくな」
「ごめん、梨沢君。彼女の無礼を許してやってほしい」
鬼才は頭を下げた
「彼女、異常なまでに異端が嫌いでね。何か事件に巻き込まれたらしくて」
「でも、あの言い方はないだろ」

「さ、帰ろう。梅ヶ枝君の紅茶が飲みたいよ」
「……ああ、そうだな」
梨沢は一度奥をみやると、振り返って歩き出した