バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

「ジューゴ」の思惑

「ほな、行ってくるで」
必要最低限の荷物と(最低限というにはいささか多そうな)端末を抱え、真苅は言った
その後ろを梨沢が付いてくる

「珍しいね、真苅が機械関係の仕事で外に出るなんて」
「まぁ、うちの異端はあくまで「マシン語を話す」ことやけど、利用されたらあかんからなぁ」
「鬼才様と梨沢様がいらっしゃるので大丈夫だとは思いますが、気を付けてくださいね」
「事務所のことは俺たちでなんとかするから」
「……きをつけて」

事務所を出た梨沢に、真苅はマスクと眼鏡を手渡した
「これ、向こうでつけておいてほしいんや。正体はあくまで黙秘せなあかんからな」
「ああ。なら、向こうで名前は呼べないだろ。何か考えてるのか?」
「うちがあんたを呼ぶときは「えーちゃん」にするわ」
「低レベルなあだ名だな。かまいやしないけどよ」



「……ああ、やっときたね」
現地で先に到着していた鬼才と合流し、施設に入る真苅と梨沢
「ちょっとしたハッキングがおきててさ。こっちじゃ手に余るから呼んだんだけど、大丈夫かい?」
「まかしとき。逆にハッキングかまして犯人つかまえたる」
「お前が言うと本当に聞こえるから怖い」

「おまたせー」
鬼才がそう言いながらドアをあけると、部屋にいた人間がざわめきながら道をあけた
「えーちゃん、先いって」
「はいはい」
梨沢は歩き出した

「……大丈夫。身元を確認する機材はついていない」
「よし、やってやろうじゃないの」
いつもの方言は抑えながら真苅は言い、デスクについた

「「ジューゴ」さん、その、本当に大丈夫なんですか」
周りから見ていた人混みから、一人の声が届いた
「まかせて。機械は私の得意分野だから」

(真苅「15(苺)」、ねぇ)
梨沢はウィンドウを展開する真苅を見ながらため息を吐いた