バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

異端嫌いの嫌いな異端

あいつに近づくな
そう言われて皆離れていった
私は、ただ一人の人間でありたかっただけなのに

「下上さん」
上司の鬼才にそう声をかけられた
逃げようとしたが、彼は腕を伸ばした
「少し休憩しないかい?」

「触らないで」
力任せに鬼才の腕をはらい、そこでようやく話しかけたのが自分の上司だと気づいた下上
「……ください」
とってつけたように敬語の末尾を言いきり、再び歩き出そうとする

「待って」
その声に、下上は思わず足を止める
「……君は」
「かまわないで。私だって、こんな「異端」になりたくなかった」

「貴方は「前のセカイ」で「異端」を殺した! 自殺だろうと何だろうと、殺したの! だから!」
下上はうつむいた
「「異端」は嫌い。「異端」になってしまった自分も、大嫌い……!!」
今度は静止の声もきかずに、下上は走り去ってしまった
一人残された鬼才は、余分に買っておいたコーヒーを下上の机に置いてため息を吐いた

「僕は、相当嫌われているらしい」