バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

16 変わらない街並み

「本当にごめん、ハシモト」
息を切らしながらヤヨイは扉を閉めた
ハシモトは最初こそ驚いていたが、状況を察するとヤヨイを応接間まで連れて行った

「街の住民がお前を追いかけまわしている、ねェ」
「誰かが通報したんだと思う。でも、おかしいよ。私の心器を知っている人は残さず殺してきたのに」
「殺り残しがあったんじゃねェの?」
「ルソー君はそんなことしないよ! ……あ」

ヤヨイにはルソー以外に思い当たる節があった
カルミアかもしれない。殺し残した警備員が、上に通したかも」
「……はァ、ここにきてカルミアか」

「とにかくごめん、ハシモト。私のせいで騒ぎになって」
「あんたは悪くねェよ。それにしても、またカルミアに先をこされるたァな」
ハシモトはコーヒーの入ったカップをヤヨイの前に置いた

「『ネズミ』には逐一連絡を入れる。お前はカルミアを落とすまでここにいろ」
「うん。ありがとう、ハシモト」

ヤヨイが部屋に入ったのを確認し、ハシモトは窓の外を見た
いつもの街並み。変わらない街並み。だが、どこかがおかしくなっている

「……最低」
ハシモトはそう吐き捨てた