バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

【エピソード・桃子】ドタバタ騒ぎと一息ついて

「だーかーらー、私のことは放っておいてってば!」
「放っておけるかよ! 友達がへこんでたら助けてやりたくなるじゃねぇか!」
柿本は加原を引きずるように前へ進む
やがて見えてきたのは、古めかしい建物

「古っ! あんた、こんなところに拠点おいてるの!?」
「中身は最新鋭なんだよ! そら、入った!」
柿本の勢いに負けた加原は建物の中に押し込まれる
中は意外にもさっぱりとしており、白を基調とした応接間が広がっていた

「お、噂をすれば帰って来たね」
鬼才が気づき、全員が顔をあげる
加原は驚き、とっさに柿本の後ろに隠れた
「そこの女の子、どちら様?」
「俺の友達。加原桃子っていうんだ。よろしく」

「で、どういった用件でここに?」
鬼才が切り出したが、加原は柿本の後ろから離れない
「……柿本様?」
梅ヶ枝の声に圧がかかったのに気づき、柿本はびくりと身震いした
「私、その、泣いてたら、連れてこられたっていうか」
「桃子!」
柿本は焦った声を上げたが時既に遅し

次の瞬間には、梅ヶ枝の手刀が柿本の首を捉えていた
柿本は寸止めされた手刀を見ながらゆるゆると手を上げる
「も、もうしません……」
「本当でしょうね」
梅ヶ枝のその声には「絶対にそうしてくださいませ」という暗喩がこもっていた

「ごめんなー。柿本ったら親切なんかお節介なんか、よく説明もせずに困ってる人連れてくるんや」
真苅が両手を合わせて頭を下げながら加原に近づく
「最近この辺りは危ないからな。栗原、真苅、彼女を送ってやってくれ」
梨沢は手をひらひらさせながら言った
「そうだね。ごめんね、お嬢さん。拠点はどこかな?」
自分より明らかに年下の栗原にお嬢さんと言われ、加原は少し困惑する

「……あの」
加原はようやく言葉を紡ぎだした
「本当は誰かに聞いてほしかったんです。だから、その、相談に乗ってくれませんか……?」
「いいのか、桃子」
「あんたが連れてきたんでしょ。それに、私、杏子ちゃんを助けるためなら、なんだってする」

「失礼。それでは貴方をお客様として迎え入れなければなりませんね」
梅ヶ枝は加原に一礼し、奥へと向かった
「そこのソファに座って。お話を聞こうか」
栗原の言葉に、加原は頷いた