バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

【エピソード・桃子】少し古い付き合い

「あれ、桃子じゃね?」
あてもなくふらふらと街を歩いていた柿本は、河川敷に見たことのある後姿を見た
彼女、加原桃子は無理矢理に顔をぬぐってこちらを向く
「……祐樹」

「どうした、目が赤いぞ」
「なんでもないもん」
「なんでもないことないだろ? 泣いてたのか?」
「あんたには関係ないもん!」
加原はぷいとそっぽを向く

「杏子は?」
不意に柿本が口にした言葉に、加原が反応した
「いつも一緒にいただろ? 喧嘩でもしたか?」
「……」

「行方不明、だって」
ようやく口を開いた加原は、そう吐き出した
「最近この辺危ないから、杏子ちゃんも、きっと……」
「……そっか」

「桃子、うちにこねぇか?」
「え?」
加原が振り返る。柿本は笑顔を加原に向け、手を差し出した
「この前話しただろ、俺が探偵やってるってこと。お前の頼みなら、探してやるよ」
「でも」

「ほら、いくぞ」
ためらう加原の手を引き、柿本は異探偵の事務所まで走り出した