バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

【エピソード・桃子】拠点

加原、柿本、梅ヶ枝、そして出先に用事があった梨沢は、共に水島杏子の拠点へと向かっていた
「あそこに見える建物。あそこの上の階を杏子ちゃんは拠点にしてたの」
加原の指が指す先には、背の低い建物が市街地に紛れて建っていた
「杏子ちゃんは地下アイドルでね。半月くらい前までこの近辺で活動してたの。でも、私とも会ってくれて、本当に気取らない女の子だった」
「俺も何度か会ったことがある。本当に桃子のことが好きだったみたいでな。ひっついて離れなかった」
加原と柿本がため息を吐きながら市街地を見る

「最後に会った時に、気になることはなかったですか?」
梅ヶ枝の問いに、加原は首を振った
「いつも通りの杏子ちゃんだった。練習に行ってくるねって別れてから、わかんないの」
「ニュースで取り上げられているということは、行方不明そのものに関しては間違いないだろう。誘拐犯の可能性も頭に入れておいた方がいいかもしれねぇな」
梨沢は顎に手をあてる

「練習場所って、少し離れた倉庫のことか?」
「うん。杏子ちゃんの名前で借りてあったはず」
「そこも調べたいですが、おそらく拠点には鍵がかかってて自由には入れないでしょう。交渉に時間をとりますね」
「可能な限り急いだ方がいいかもな」

「よし、そうと決まれば管理会社を調べるか」
一行が立ち去ろうとしたとき、加原が振り向いた
「……?」
「桃子、どうした?」
「……ううん、なんでもない」

加原の目には、一人の少女が見えた気がした