バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

【エピソード・桃子】迎えのメール

日はとっぷりと暮れ、異探偵の拠点には一同が揃っていた
加原は既に柿本が送り、彼女の拠点に戻っている

「管理人と話はできたが、立ち合いによる鍵の開錠は明日になるんだと」
「せやったらうちも立ちあおうか?明日は久しぶりに時間があいてんねん」
「機械関係を操作するなら任せた方がよさそうだね」

「……ねぇ、梨沢」
全員が話し合ってる中、はぶられてた林檎が梨沢の白衣の裾を引っ張る
「あ? どうした、林檎。寂しくなったか?」
「今日会った「人形」、何を探してたの?」
「ああ、あれは人を探してたんだよ。友達らしく、て……さ?」
瞬間、梨沢の頭に疑問符が浮かんだ
「そういや、依頼人は捜し人の安否を確認してないんだよな……?」

その時、柿本の端末が音を立てた
誰かからの着信のようだ。柿本がとりあげると、「加原桃子」の表示が出ている
「もしもし、桃子か?」
『祐樹、どうしよう、私、私……』

「柿本様、代わってください」
半ば端末を奪い取る形で梅ヶ枝が交代する
「いかがなさいましたか、加原様」
『今、メールがきて……。「今夜、迎えにいくね」って、杏子ちゃんから……』
「水島様、から?」

「水島杏子は捜し人そのものじゃないか。よかったんじゃないの?」
栗原は呑気な声を出す。鬼才は顎に手をあてた
「いや、内容からしておかしいと思うね。柿本君、すぐに加原さんのところへ行けるかな?」
「分かった」
梅ヶ枝から端末を受け取った柿本は、「そこで待ってろ」と言って端末を仕舞う

「梅ヶ枝、鬼才さん、ちょっといいか」
梨沢も立ち上がり、白衣を羽織った
「真苅、被害者の拠点の近辺にある倉庫を片っ端から洗い出して俺に送ってくれ」
「わ、わかったわ」
真苅が頷くのを確認し、梨沢はドアを開ける
それを追いこすように柿本は走り出した

『……杏子、ちゃん?』
加原のその言葉は、柿本には聞こえてなかった