17 ただの面白がり
「『猿回し』さんよぉ」
『猿回し』の自室に入り、『薬師』は話しかけてきた
「そろそろゴーサイン出してくれよ。退屈で仕方ない」
「慌てるな。退屈なのは向こうも一緒さ」
「『薬師』、お前は何が望みだ」
『猿回し』の言葉に、『薬師』は黙って耳を傾ける
「お前みたいな狡猾な人間が、こんな組織に入ってのうのうと殺人鬼の下っ端やってると怪しくて仕方ねぇんだよ」
「別に? 俺はただ、研究ができればそれでいい」
「カルミアは上玉の雇い主だ。研究のためなら何でも用意してくれる。そのために命捧げるんなら、こんなにいいところはねぇよ」
「……そうか」
『猿回し』は黙り込む
「用事はそれだけか。今の質問に答えるなら、ノーだ」
「はいはいっと。おとなしく待ってますよーだ」
『薬師』はそう言いながら部屋から出ていった
「冷やかしにきただけか。全く」
「……なんて、簡単に俺が引き下がるわけないだろう?」
扉が閉まり、『薬師』は微笑みをたたえたまま踵を返した
「先に奴らをぶっ潰して、手柄をとってやる」
その声はどこか楽し気に聞こえた