バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

18 家族

「アイラさん」
二階のベランダに座っていたアイラに、フブキが声をかけた
「ご飯、できたわよ。下に降りて」
「……ああ」

「元気ないわね。どうかした?」
フブキはあくまでも明るく接してくる。アイラはそこが彼女のいい所であり悪い所でもあると承知していた

「母さんのことを、考えていた」
「アイラさんのお母さん?」
アイラの母親は、アイラがまだ小さな頃に名瀬田によって殺害されていた。そのことはフブキも知っている

「ここで過ごすようになってから、皆、家族みたいに俺と接してくる。俺が異常なのを分かって、だ」
フブキは黙ってアイラの話をきく
「もし、母さんがいたら、こんな風に接してくれるのかと思ったら、寂しくてな」

「アイラさんが寂しいなんて、なんだか似合わないわね」
フブキはぽんとアイラの肩に手をおいた
「お母さんがいないのは確かに辛いわよね。私も両親を殺されたけど、幼い頃にそんな目にあってるアイラさんの方が辛いと思うの」

「でもね、これからは私たちが「家族」になってあげたい。私はそう思うわ。だから、元気だして」
微笑むフブキ。自身もまた辛い目にあっているのに、それを微塵も感じさせない優しい笑顔
アイラは目頭を拭うと立ち上がった