バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

とある研究所にて

「大黒屋ー。差し入れ持ってきたぞー」
都市から少し離れた場所に、その研究所はある
慣れた手つきでインターホンを押し、梨沢は画面を見上げていた
やがて宙に浮かぶその画面によく見知った顔が映る

『梨沢か。珍しい客もいたもんだ』
「鬼才さんから預かったデータを届けに来た。入れてくれ」
『おうよ』
自動ロックのドアが開かれるのを確認し、梨沢は歩を進めた

「よっ」
一室の扉を開け、梨沢は片手を上げる
中には二人の人物がいた
手前にいた茶色いコートの人物はびくりと肩を震わせてこちらを見た
「な、なんだ、梨沢さんか。びっくりした……」
「ツキトさん、元気そうで何よりだ」

「これ、真苅から押し付けられたシュークリーム。二人で食ってくれ」
梨沢はツキトの手に籠をのせ、そのまま前に進んだ

「大黒屋、久しぶり」
大黒屋と呼ばれたその人物は、椅子をまわしてこちらを向いた
「よぉ、梨沢。元気そうで」

鬼才からのデータを受け取った大黒屋は、梨沢に椅子をすすめて自分は立ち上がった
「ツキトさんの様子はどうだ」
「今のところは安定しているが、やはり戦闘には乗り気ではない。弱くはないんだがな」
「「闇」は」
「安心しろ。ぶれてきたら援軍を呼ぶさ」

ツキトがシュークリームを皿にのせて運んできた
大黒屋はシュークリームを受け取り、ツキトにも椅子を勧める
ツキトが椅子に座ったのを確認し、梨沢は話を進めた

「お前の方はどうなんだよ」
「いつも通りに決まってるだろ? 隠すところは隠して生活してるさ」
「ってことは、いまだにチームでは」
「女らしくしてるよ。素でいると裏切られそうで怖いからな」
「「闇華」は?」
「相変わらず頭ん中で暴れてら」

「そ、その。「闇華」って単語、何度か聞いてるんですけど、一体何者なんですか?まさか、ルイウの一種……?」
ツキトのその言葉に、一瞬大黒屋は言葉に詰まった
しかし、すぐに微笑みを彼に向け、答える
「いくらルイウの生態を研究しているとはいえ、マインドアウトには気を配ってるだろ?闇華は「闇」だ。ルイウじゃない。俺の協力者みたいなもんだな」
「は、はぁ」

「ツキトも闇属性だからな。近いうちに、「闇」について大黒屋から教わるといい」
梨沢はそう言って出された紅茶を口に運んだ
「もっとも、こいつの事だ。俺にさえ何か隠しているかもしれんから、気をつけな」