バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

林檎のお散歩

「いってきます」
普段は留守番係として事務所に引きこもっている林檎が、ここ最近一人で外出をすることが多くなった
精神的に発達途中である林檎を一人で外に出すのはもってのほかなのだが、今のところ問題は起こしてないのでヘテロは交代で遠くで見守るようにしていた

「……」
梨沢は遠巻きに林檎の様子を見ていた
公園のベンチに座っている林檎。梨沢はそれを道を挟んで反対側のカフェで様子を伺っている

いい天気の昼下がりだ。公園でひなたぼっこも悪くない
林檎はそのために公園に来ているのだろうか、と考えたところで、変化が起きた

ちょんと座っている林檎の隣に、女性が座った
何事だと見ていると、女性は鞄から小さな袋を取り出して林檎に差し出した
林檎はそれを受けとると、袋を開いて中身を取り出した。どうやらクッキーのようだ

林檎はクッキーをひとつ取り出すと、残りを女性に返した
女性もまた、袋からクッキーを取り出す
そして、二人一緒にたべだした

(……林檎のやつ、何時の間にあんな知り合いつくったんだ)
梨沢は女性をやや警戒しながら見ていたが、そんなことも露知らず、二人はもくもくとクッキーを食べている

「帰ったら話を聞いてみるか」
梨沢は紅茶をあおり、二人を眺めた