バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

望まれぬ成果

「研究をやめてくれないか」
一度、そんな話を持ち掛けられたことがある
それがなぜなのか、俺には理解できなかった
人類のために成果を出すことは、寧ろいいことなのではないのか

「理由がはっきりしないのであれば、俺は研究をやめるつもりはありません」
はっきりそう告げて机に戻った
冷たい視線がこちらに向けられているが、俺はかまわず研究を続けた

数日後、俺は何者かに殴られて、数日意識を失った

状況は覚えていた
夜、帰宅途中に後ろからいきなり襲われたのだ
しかし、どうして襲われたのかはてんで分からなかった
どこかの暴漢が目を付けたのだろう。そう思っていた

一か月ほどの療養を経て研究所に戻った時、俺は目の前の光景に驚いた
今まで積み重ねてきた研究の成果が、すべて破棄されていた
誰がやったのかはわからなかったが、少なくとも研究員の誰かであることはわかった
そんなにも、俺に研究を進めてほしくなかったのか

「もう、やめてしまえ」
どこからか声が聞こえた
「世間は、お前の研究についていけないんだよ」

認めてほしかったわけではないのに
俺はその日から葛藤するようになった

俺が「セカイ」の存在を見つけ、死ぬまでには、それほど時間はかからなかった