バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

関門海峡より

関門海峡。福岡エリアと山口エリアをつなぐ大きな橋の上に彼らはいた
夕刻の太陽が海に沈み行く。青い海が一度黒を纏ってオレンジに染め上げられる
信行はそれを眺めながら、秀忠はそれに背を向けるようにして橋げたに体を預けていた。

「秀忠は見ないの、夕日」
「あんまり興味がないね。目が悪くなる」
「君、絶対人生の3分の1は損してる」
「それ、この前も言われた」

日が沈み、上空は漆黒に染まりだしている
信行はちらりと秀忠の方を見た
「家愛は、どこに行ってしまったんだろうね」
信行は小型ナイフを取り出し、手元でもてあそぶ

「恐山の書庫に家愛の本がないんだから、まだ生きてるか、ルイウに呑まれたか」
「君、いつも同じ返事をするよね。大丈夫だとか、気の利いた事言えない訳?」
「そんなこと言って、お前は心配すらしてないだろ」
「……まぁね。家愛のことだ。彼女は彼女なりに頑張ってるだろうよ」
信行はナイフを受け止めた

「さて、今日はどこに行く?」
「三日前の富山の倒壊事故現場。覚えてるか? あそこに取り残しがないか調べたい」
「了解しましたっと」

日はとうに沈み切り、星が瞬きだしていた
信行と秀忠は橋の上を歩き出した