バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

某月某日、某所にて

セカイに来て間もない頃
幾度かルイウに襲われては助けてもらいながら生き延びてきた
その頃の私に属性はなかった
いや、あったかもしれないが、一体何のことかさっぱり分からなかったのである
武器もはっきりしなかった。助けてくれたプレイヤーが分け与えてくれた糸でその場をしのいでいた

自分の属性と武器を模索して数日
人通りの少ない道を、私は歩いていた
足を止めたのは、目の前に黒い靄のようなものが見えたからだ
『……よう』
どこからともなく声が聞こえた

『こんなところに獲物が通りかかるとは、ラッキーだな』
「何の話? 貴方は誰なの?」
『俺は「闇華」。闇そのものだ』
「闇、そのもの?」

嫌な予感がした
私は糸をはりながら少しづつ後ろに下がる
靄はそこから動かない
ある程度距離を取ったところで、私は踵を返して走り出した
が、すぐにその足を止めることになる

『おいおい、冷たいじゃねぇか。会話の一つもなしに逃げるなんてよ』
靄が、いや、靄のようなものが体に巻き付き、口をふさいだ
実体がないはずなのに、体が縛られたように動けない
「むぐっ……!」
離れなさい。そう言おうとしても塞がれた口からはかろうじて息ができる程度である
『まぁ、いい』
靄は嘲笑するように言った

『お前、俺の体になれ』

ずるり
靄が口を通して体の中に入っていく
酷い吐き気に襲われ、何度も吐き出そうとするが、靄の勢いは止まらない
身体に絡みついていた靄が離れ、私はその場に倒れた
このまま死んでしまうのか。いや、もっと恐ろしいことになるのではないだろうか
得も言われぬ恐怖に襲われたまま、私は意識を手放した