バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

新たな出会いとタイムリミット

「……!」
がばりと起き上がる
ここは何処だ?
真っ白な個室のようだ。申し訳程度のベッドと机、ちいさな椅子が置かれている
俺はどうやらこのベッドに寝かされていたらしい

何故こんな所にいる?
確か、妙な靄に身体を奪われて、気を失ったはずである
思考を巡らせど、思い当たる事象は浮かばない
考え込んでいると、ドアが開き、誰かが入ってきた
「あ!」
彼は俺の姿をみとめると、抱きつくかのように駆け寄った
「よかった、生きてた…!」

ガロン・ハーヴォックと彼は名乗った
元々自警団で働いていたが、属性の関係で自ら自警団を退き、医者になって間もないという
「君が道端に倒れていたから、びっくりしちゃって、慌てて連れて帰っちゃった。怪我はなさそうだけど、大丈夫?」
ガロンは心配そうにこちらを見る
「え、ええ、私は大丈夫……」
そう言いながら、ほどけていた髪を掬い上げた時に気がついた
「……じゃ、ないかも」

私の髪は、黒く染まっていた
先程「闇華」と名乗った靄が身体の中に入ったことは、間違いないらしい
『……ちっ、相手を間違えた』
不意に頭に声が響いてきた
直接脳内に響くこの感覚。気持ちが悪い

『思ったより強靭な精神をもってるらしいな、お前。俺が乗っ取って、けろっとしてるのは初めてだ』
悔しそうな台詞ではあったが、まだ余裕がありそうな口振りだ
今頼れるのは、目の前にいるガロンしかいない

「助けてください!ルイウだかなんだか分かんないけど、変なのが私の身体を乗っ取ろうとしてるんです!」
「なんだって!」
ガロンはわたわたとしだした。案外突然の出来事には弱いのかもしれない
「何とかしよう。僕にできるのはほんの少しだけど」
「かまいません。私も手伝います」

こうして、俺とガロン、そして「闇華」の奇妙な生活が始まった