バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

26 恩人

私は最初から、人に恵まれていた
目覚めた時には博士がいて、博士が私を外に連れ出してくれた
友達もできた。いや、友達というより、仲間というのが相応しいかもしれない

500年経った今。私はまた、仲間に囲まれている
幸せだ
こんな幸せを、私が噛み締めてもいいのだろうか

「草香ちゃん!」
家に帰ると、慌てた様子でフブキさんが駆け寄ってきた
「ボロボロじゃない! 大丈夫!?」
「機械に痛覚はありません。問題なく動きます」
「そうじゃなくて……」
フブキさんは困った顔をする

カルミアですか、草香さん」
上の階からルソーさんも降りてきた
私はひとつ頷く
「『匠』にやられました。向こうも足留めしたので、暫くはうごけないと思います」

「無茶はしませんでしたか」
ルソーさんに問われて、私は首を傾げる
「無茶もなにも、私は機械で」
「だから心配しているのですよ」
フブキさんが、私に抱きついた
「無事でよかった、草香ちゃん……」

だから、私が守らなきゃ
この幸せを守れるのは、きっと私しかいない
私は、アンドロイド。でも、心をもつ
その心を棄てることは、きっとできない