バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

不穏な空気

「……あれ? 鬼才さん、残しちゃうの?」
一足先に席を立った鬼才に、栗原が声をかける
「貴方が晩御飯を残すとは、珍しいですね」
「食欲がわかなかったんだ。ごめんね、せっかく作ってくれたのに」
鬼才はそういうと部屋を後にした

部屋に残されたメンバーは互いに顔を見合わせる
「最近、鬼才さんおかしくない」
「せやろ? うちも思うねん。なんかこう、無理やり笑ってる感じするわ」
「食欲も芳しくなく、あまり眠れてもいないようですが」
「ストレス、じゃね?」
梨沢の言葉で全員の視線が彼に向いた

「あの人、いつも笑って、他人を許して、自分が犠牲になるじゃねぇか。ストレスも溜まっておかしくないんじゃねえの」
「確かに……。いたわり不足でしたかね」
「鬼才さんが平気な顔してるのが悪いんだって。梅ヶ枝さんの落ち度じゃないよ」
「……」
林檎は梨沢の服のすそを引っ張った

「鬼才さん、あのままにするの、よくない」
「……」
梨沢は黙って、かき消されそうな林檎の声を聞く
「すぐに、はなしてあげて」
「そうする。ありがとな」
梨沢は立ち上がり、鬼才の部屋に向かった

鬼才の部屋には、誰もいなかった