バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

27 動き出す時

「……ちっ」
『猿回し』は頭を抱えていた
『薬師』が死に、『匠』は重症。それだけで頭が痛くなる案件だった

「さ、『猿回し』様、これからどうするおつもりで」
二つ名を持つ殺人鬼は、これで殆どいなくなった
名前のない兵士を仕向けたとしても、一度たかだかマシンガンと犬にやられるだけである

「……俺がいく」
『猿回し』は立ち上がった。部下が慌てる
「『猿回し』様が直々にいかずとも我々が」
「黙れ」
そういう『猿回し』の目には殺意が浮かんでいた

そのとき、電子音を鳴らして画面がひとつ、ぱっと変わった
メールだ。宛名を確認し、彼は渋い顔をする
「…『預言者』、か」
彼が直々にメールをよこす奴ではないことは知っていた
何かある。『猿回し』はメールを開いた

『これから一週間、部屋を出ないでください。『猿回し』さんと貴方の主の死相が見えます』

『猿回し』は音高く画面を叩きつけた
そして、しり込みする部下をおいて歩き出した
左胸に手を当てる。ずるりと音を鳴らして懐中時計が現れる
「俺が死ぬ? ……馬鹿な」
彼はそう言いながら廊下を歩いていった