バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

42 変わらない日常

大きな敵を打ち破ったからと言って、安息が訪れるわけではない
それはルソー自身も知っていたことだし、ハシモトにも忠告された
彼はもう一生泥沼の底から這い上がることはできないだろう
それでもよかった。姉が、「仲間」がいる限り

「ねぇ、知ってる? 『赤髪の殺人鬼』の噂」

巷の学生の噂話に耳を貸す余裕はない
弁護士の姿をした殺人鬼は今日もミカガミ町を歩いていく

「明日、皆があいていたらお花見をしよう」
フブキの提案で一行はくるくると動いていた
桜のつぼみがほころぶ、まだ花見の時期にしては早いこの頃
それは、カルミア討伐記念を兼ねたようなものだった

背中の傷はまだ痛むが、動く分には問題ない
すっと初老の男が彼とすれ違う
そのとき、彼はルソーの肩を叩いた
「君は長生きはできない。その命を大切にしなさい」
初老の男はそう言って消えていった
今更な話だった

時は500年先の未来
デジタルが主流となったこの世界にも、アナログに生きる人間がいる

「どうも、『弁護士』です。ちょっと、殺しに来ました」
赤い包丁を向けて、彼は言った