バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

4 暗示

勢いあまって飛び出してきたはいいが、彼は迷子になっていた
複雑に入り組む暗い路地
彼はその場に座り込んでいた

どん、と蹴り飛ばされるようにぶつかる
見上げると相手はいかにも怖い姿をしていた
「おい、なんだてめぇ」
信行は蒼い顔で走り出した

何度折れ曲がったか分からない
しかし、袋小路にぶつかってしまった
振り向くと怖い男
信行は怖くなり、思わず胸に手をあてた



「信行ー、どこに行ったのー」
家愛は声を上げながら路地裏を探す
その後ろから秀忠もついてきている

そのときだった
「……家愛、さん……」
そんな声が聞こえて振り返ると、信行がいた
しかし様子がおかしい

彼は頭から赤黒い液体をかぶったように汚れていた
そして、その手には草刈り用の鎌
しかしその色も赤い
まるで、それは「心器」のように

「信行、それ……」
家愛は刺激しないようにそっと声をかけ、彼に肩を貸した
「……僕の、心器です」

「僕の暗示は、「死神」」
それはあまりにも、この世界に必要な暗示だった