バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

5 馬鹿と心器は使いよう

「「死神」の暗示を持つ鎌使い。お前はそれを知っていたはずだ」
秀忠はイマイに声をかける
イマイはキーを打つ手を止めると、くるりとこちらを向いた
闇のように深い黒の瞳がこちらを向く

「僕を誰だと思ってるんだい。『預言者』の息子にして超自然現象の使いだよ」
「超自然現象……?」
信行はなぞるように返す
彼は今、家愛と秀忠の後ろで震えながら立っていた

「僕は人を見るだけで心器を暗示を見抜くことができる」
イマイは立ち上がり、台所に向かいながら言う
「僕の父親は人の寿命が見える男でね。その素質がうつってしまった次第さ」

「イマイさんは、怖くないんですか」
信行の声に反応したのかしないのか。イマイはそのままカップにお湯を注ぐ
「裏世界が、ってことかな。そうだとしたらもう今更な話だ。僕は裏世界でないと生きられない。蛙の子は蛙。僕は例外なく蛙だった」

三人の目の前にカップが置かれた
「信行はコーヒーでよかったよね?」
「あ、はい」

「決めた。君に二つ名をあげよう」
イマイは信行を見た
「はぁ? イマイ、本気かよ。二つ名は普通、実力のある殺人鬼につけられるものだろうが」
秀忠の反論を、イマイは物ともしない
「それなりの活躍を見込んでのことだ。大丈夫。彼は立派な殺人鬼になる」

すっと指を伸ばし、イマイは信行を指さした
「『首狩り』。それが君の二つ名だ」
「首……狩り?」
「その鎌で悪しき者の首を狩り取れ。大丈夫、君ならできる」
信行は首を傾げるばかりだった