バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

6 殺しの覚悟

ドスン
地響きがする
秀忠が油断していたわけではないのだ。どころか手を抜く余裕など今にしてあるはずもなかった
その秀忠の腹と胸に乗り、信行は彼の首筋に鎌を向けていた

「……ははっ、成長が早すぎるんじゃねぇの?」
秀忠の声は震えている
信行は秀忠から鎌をはなし、体から降りた
「家愛、どう思った」
「あたしも同意見。信行、ここ一か月で成長しすぎよ」

「だが、こいつにはまだ「ココロ」が足りない」
秀忠が起き上がりながら言う
何が言いたいのか、信行にも分かっていた
「人を殺す覚悟……だよね」
「そう。鎌のサイズもそれに比例して草刈り鎌の大きさ位にしかなっていない」
「それじゃ『首狩り』にはなれないんじゃない?」
家愛が首を振りながら言った
信行は視線を落とす

「信行、今夜から俺たちの仕事に同行しろ」
「えっ?」
秀忠は手斧を回しながら言う
「そこで仕事を覚えろ。お前はいつか「復讐」しなければならないんだからな」
「あたしも賛成。いこうよ、信行」

「順調みたいだね、君たち」
イマイがコーヒーをトレーに乗せて運んできた
「僕はただの闇ブローカーだから、そういうこと教えられなくてさ」
「分かってる。だからこうして教えてるんだろ?」

「イマイさん。僕は」
「殺人鬼になる気なんて本当はない、でしょ」
先に台詞を取られ、信行は黙り込む
「悪いけど、ここに来てしまった以上それは避けられないことだ。諦めてくれ」
「……」

「イマイ、今日の獲物は」
「ミカガミ町南部の「清掃」だ。よろしく頼むね」
イマイは立ち去った
何か言いたげだった信行を一度見て