バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

17 水と音


「論、そっちの準備はできてるな!?」
『大丈夫』
『こちら真宮。順調にエネミーを誘導できているよ』
住宅地にいた黒い生物をかき集め、笛利は走っていた

エネミー討伐作戦も終盤に差し掛かった頃
大黒の「自由工作」も終盤を迎えていた
同時にエネミーもこちらを感知したらしく、徐々にこちらへと向かっている

笛利は高田が待ち構えているところまで走っていた
そこは水の張られたプール。真宮の根回しで貸し切りにすることができたのである
そこまでたどり着いた笛利はシャボン玉セットを取り出す

「真宮! エネミーは何匹だ!」
『小型のものが10と3匹、中型が5匹だ。よくかき集めたよ』
「こっからが本番だっての!」
笛利はシャボン玉を放つ
逃げ惑うエネミーは一匹のこらず捕らえられた
浮遊するシャボン玉は水に沈められはじける

「論! いまだ!」
プールに入って待ち構えていた高田が大きく息を吸いこんでプールの水に沈んだ
そして、水の中で大声を放ったのだ

「ヘルツ(hertz)」、「ビート(beat)」。二つの要素を掛け合わせる「ヘルビート(hell beat)」
更に水中では、音の速度は地上の4倍である
威力を持った音が水中を揺らし、黒い生物を粉々に壊した

「論!」
水に浮きあがった高田を、笛利が補助しながら陸地にあげる
「……僕は、役に立てたかな?」
「当たり前だろ。よく頑張ったよ」
笛利はタオルで乱暴に体をこすった