バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

8 「仮面」

目の前に出されたお茶をすすり、遠賀川は黒波を見る
アイデンティティについて、勉強はしているわね?」
アイデンティティ。すなわち自己同一性。そこにいる自分は変わらず自分であるという証明である。
主に高校生前後で揺らぎが生じ、そして確かなものへと変貌していく

「さっきの現象。私たちは「仮面(ペルソナ)」と呼んでいるのだけれど、そのアイデンティティの揺らぎによって生じるの」
遠賀川は思い出す。自分の周りを取り囲んでいた白い帯と、春日や黒波に現れた物体を
「大人になるまでには大体消えるから安心して……と、言いたいところなのだけれど、これを知ってしまった以上、君にお願いをせざるをえなくなった」
「何を、ですか」

「時々、貴方のように仮面が暴走して手が付けられなくなる時がある。その時に、仮面を破壊して元に戻す役割を担ってほしい。私だけでは力不足でね」
「……」
遠賀川は立ち上がり、出入り口まで歩く

「考えておきます。けど、多分協力はできない」
「どうして?」
春日の声に、遠賀川は僅かに振り向いて答えた

「もう、「不協和音」は聞きたくない」