バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

北海道エリアの人間

 ワープゾーンで北海道エリアに飛んだ大黒屋、ツキト、梨沢、着いて早々に「さみぃな、ここ……」と梨沢がぼやく。
 季節は冬、何処を見ても雪が積もり、遠くに見える海岸線には流氷が辺りの海を閉ざす北の地にある、かつての監獄に三人が来たのには理由がある。
 ツキトの闇を知るには、彼とゆかりのある場所まで行かなければならないという結論に達したからだ。
「流石に過度の厚着の必要はなかったが、準備していなかったら凍えていたところだ」
「ツキト、案内を頼むよ」
「は、はい……」
 
 おずおずとツキトは歩き始め、大黒屋と梨沢はそれについていく。
 まず、三人の目に入るは赤い煉瓦で出来た門、遠くには紺の制服を着た男が立っているが、それ自体は黙って居るだけのマネキンだが、ツキトはそれを見て、いきなり足を止めた。
「どうした、ツキト」と、大黒屋が後ろから声をかけるが、本人にはその声が耳に入らず「……ここは……」と独り言を呟き、何かを思い出しそうになっていた。

 彼の脳内で聞こえてくるのは、誰かが自分を見て「もう二度と来るなよ、109番」と言う声、
 その声に反応するように、ツキトは「何を今更な事を言ってるんです、自分はもう、この場所で過ごすのはこりごりですわ」と、無意識に自らの口で言い答えたのだ。

 二人がその声を聞き「ツキト? おい、ツキト!」と数度目の声かけで彼はようやく我に帰る姿を見て「大丈夫か?」と大黒屋が問う。その呼び声に反応し、我に返ったツキトは「だ、大丈夫です…」と答え、大きく息を吐く。大黒屋と梨沢はその様子を見て、あえて正面に見える門から行かず、脇の道から中を歩き始めたのだった。