バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

11 男になりたかった少女

彼女は悩んでいた
どうにかして男らしくなりたかった
しかし、古いしきたりの家族の前でそんなことを言えば、平手が飛ぶのが明白だった

「開けるぞ、雲外」
そう言って水城の部屋を、彼女の父が開けてずかずかと入ってきた
「な、何の用ですか、お父さ――」
その瞬間、彼女の頬に平手が飛んできた

ベッドに転がる水城
父親は彼女の襟首を掴んで叫んだ
「あれほど言ってるではないか、どうして女らしくしない?」
「……」

「制服の下にジャージを穿いているそうだな」
「!」
「スカートで来いと学校は言っているのだろう?どうしてそれをしない」
父の言い方には威圧感があり、彼女を許す気はさらさらなさそうだった
水城の頬に、一筋の涙が走った

「知るかよ!」
水城は父の手を払った
そして、階下までかけて行く
「どこへいく、雲外」
「知るか、こんな家族!」
彼女は靴に足を引っかけると、外へと出て行った

彼女の周りにナイフが浮かんでいるのに、気が付かないまま