バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

15 自分の価値

「目が覚めたか、水城」
「んぁ……?」
水城は見慣れない天井を見上げたままベッドに寝かされていた
遠賀川は片時も離れずに水城を眺めていた

「あれ、俺、学校の前あたりまできて……」
「そこから先は覚えてないんだな」
遠賀川は水城にせまる
勿論「不協和音」が出ない程度に

「どうしてあの時間にあんなところにいたんだ?」
「……親が嫌で、飛び出してきた」
水城はうちあけた
男の子みたいになりたいこと。両親が許してくれないこと。周りが奇異な目で見てくること

「見せることはできねぇけどよ、胸にも傷跡が残ってんだ。切り落としたくて仕方なくて」
「……」
遠賀川は何も言わず傍らに置いてあった緑茶を差し出した
水城はそれを受け取ると、一口飲む

「そのうち見つかるだろ、お前の事、分かってくれる奴」
「!」
遠賀川は水城を改めて見た
「自分で世間に逆らって生き方を決めようとするって、難しいと思うんだ。だから、お前はえらいよ」
「そんなことねぇよ。……でも、ありがとな」
水城はようやく微笑んだ