バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

18 文学少年と聴衆少年

「千鳥」
暁はノートを渡しながら言った
目の前にいる男子生徒は黒髪黒目の大人しい少年だ
千鳥虚空。彼は運動よりも本を愛する少年である

「数学のノート。相模が返してくれって」
「あ、ありがとう」
ノートを受け取り、ページを開く千鳥。しかし、すぐに眉間に皺を寄せた。
「どうかしたか」
遠賀川は後ろから千鳥のノートを見る
ぐしゃぐしゃと乱暴にそこに線が引かれ、到底読めるものではなくなっていた。
「……なんでもないよ」
千鳥はノートを鞄に仕舞って立ち上がる

遠賀川君、学校は楽しい?」
「え」
遠賀川は黙って考えた。楽しい、と思えることがあるだろうか
「……普通、だな」
「そっか。よかったね」
何をもってしてよかったと言えるのか分からないまま、千鳥はその場を立ち去った