バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

19 言葉の呪い

宙を歩いているようだった
ふわふわと足取りもおぼつかなく、彼は歩く
「おい」
不意に後ろから聞き覚えのある声が聞こえ、彼はびくりと震える
振り向いた先にはやはりそいつがいた
「相模君……」

相模は素行も態度も最悪な学生だった
そして彼――千鳥は相模に虐めの対象として扱われているのである
「金、持ってきただろ?」
「いつも言ってるじゃないか。余分なお金は持ってきてない」
「ふーん」
相模は千鳥の胸倉を掴むと、顔を殴った

バランスを崩ししたたかに壁に体を打ち付ける千鳥
相模はにやにやしながら手を伸ばした
そのとき、バチンと音がして相模の手が払われた
「!?」
「……「そこに伏せろ」」
相模には、この後の記憶がなかった

嗚呼、どうしてこうなったことか
己(おれ)の言葉は、既に凶器と化していたのだ