バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

21 襲い来る言葉

「「「矛盾」表裏の仮面」!」
水城の周りに光が走る
やがてそれは、手を象ったオブジェと仮面に姿を変え、彼女の顔の半分にも仮面があてがわれた
それを見届けて遠賀川も手を上げる
「「「隔絶」無知の仮面」」
彼の周りにさっと白い紙が伸びる

千鳥は二人を睨みつけつつも、口に手を当てる
ぼたぼたとそこから落ちる黒い液体は更に浮遊して千鳥を取り囲む
「千鳥、今助けてやるからな!」
水城の腕が光り、獣のような大きな腕に変わった
そして勢いをつけとびかかる
しかし

「守れ」
千鳥がそう口にすると、黒い液体が水城の前に現れ、彼女を体ごとはじいた
「うわっ!」
転びそうになるのをなんとか体制を整え、水城は負けじととびかかる
黒い液体が壁となり、彼女の爪をはじく
「燃えろ」
千鳥が呟いた瞬間、液体は形を変え、炎を迸らせたのだ

「下がれ、水城」
炎に突っ込みそうになった水城の襟首をつかんで引き寄せ、遠賀川は唱えた
「コピー展開、「「過護」防衛の仮面」」
遠賀川の目の前に盾が現れ、炎をはじく
「大丈夫か、水城」
「ありがとな、暁」

遠賀川はじっと千鳥を見据えている
彼らに向けられた「不協和音」は、途切れながらも聞こえてくる
しかし、彼はもう一つの異変に気付いていた
彼を見ると、「ノイズ」が走る。彼は万全の態勢じゃない。しかもどんどん大きくなってくる

「やばいぞ、これは」
「どうかしたか、暁」
水城の声に反応し、遠賀川は返した
「千鳥は「仮面」を使う反動で体力を消耗している。このままじゃ疲労で倒れるぞ」
「!」

「……っ、げほっ!」
千鳥が大きく咳き込み、その場に膝を付いた
「ごほっ、げほげほっ!!」
「千鳥!」
水城が叫ぶ
「水城、やれるか」
「当たり前だ。早く止めなきゃ、千鳥が危ない」

「コピー展開、「「矛盾」表裏の仮面」」
遠賀川の腕が光り、水城と同じく獣のものに変わった
「いくぞ」
遠賀川の合図で二人は地面を蹴りだした
襲い来る炎にひるまず、二人はまっすぐ千鳥にせまる

「はじけ飛べ!」
ぐわり、風と「不協和音」を感じて遠賀川は体をよけた
反応が遅れた水城は液体に弾かれ、遠くへと飛ばされる
「すまん、千鳥」
遠賀川は千鳥の液体をよけ、千鳥の腹部を殴りつけた
「かはっ……!!」
千鳥はその場にうずくまり、宙をさまよっていた液体はびしゃびしゃと落ちて消えていった

千鳥が気絶したのを確認し、遠賀川は「仮面」を仕舞う
そして彼を抱え上げ、水城の提案で彼女の家に運び込まれた