バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

3 「マコト」を名乗る男

一夜が明けた
事務所の掃除をしている真は、ちらりとソファでくつろぐ男を見た

昨日であった黒ずくめのそっくりな男
名を「モチヅキマコト」と名乗った
姿も名前もそっくりなのを偶然と片付けることはできない
そんなんだから一度事務所に誘い込んだまではいいが
(なんていえばいいんだよ……)
真はそう思いながらマコトに近づいた

「えーっと、モチヅキさん?」
「マコトでいいよ。僕は君に親しみを持ってほしいんだ」
「僕からしてみれば怖いだけですよ」
そういいながらも低いテーブルに紅茶を置く真

「それで、どんな依頼でここに来たんですか?」
「だから、「探偵」になる気はないかねって聞いているんだ」
「生憎ですが、僕はもう既に探偵で」
「そうじゃない」
マコトは立ち上がってぐいっと真に近づいた

「君は私たち「怪盗」に選ばれた。事件を暴く存在としてね」
怪盗。探偵の宿敵。真は身構える
「外に出てみればわかる。君にはもう既に違う世界を見る目を渡したのだから」
マコトは優雅に紅茶を含んだ
真は首を傾げながらも、出て行く気のないこの黒ずくめをどうやって引っ張り出すか考えだした