2 ドッペルゲンガー
猫探しの依頼を終えて帰る真の足取りは重いものだった
渡来の書物に出てくる「探偵」とかけ離れた生活を送る真は疲れていたのである
人通りの少ない路地を進む
自宅兼事務所はもう間もなくだった
そこに、不意に声
「やぁ、望月真」
真は驚いて振り返る
そこに立っていたのは一人の男
陽の沈んだ世界に溶け込む黒い外套姿
その表情は帽子によって遮られる
真はこの男のことを全く知らなかった
「何だい。依頼かな」
冷静に真は返す
男はにやにやと笑いながら真に近づく
「僕は君のドッペルゲンガーだ」
「ドッペルゲンガー?」
それが何を意味するのか分からず、勉強不足だなと真は感じる
「ああ、君に成り代わるわけではない。一つ、お願いがあってきたんだ」
男は帽子をとり、真の手を取った
「僕の「探偵」になってくれないか、望月真」
その顔は、鏡写しのように真にそっくりだった