バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

5 猫探しと事件の気配

「ったく、何で俺たちがこんなことしなきゃならんのかね」
「仕方ないですよ。探偵ってこういうものなんでしょう?」
「フィクションでも猫探しなんてしねぇよ」
草むらを探りながら先生と私は会話をする

さかのぼること一時間前
久方ぶりの来客に心躍っていた私(と、苦い顔で出迎える先生)だったけれど、依頼されたのは猫探し
割のいい仕事だから引き受けたものの、曲がりなりにもこの街は広い
しらみつぶしに探そうと今こうして茂みを漁っているのです

「あのババァの面見たかよ。いかにも成金で私がえらいんですぅーみたいな顔」
「先生、依頼人をそう呼ばわってはいけませんよ」
「今度は態度の悪いサスペンス読ませてやる」
そんなやり取りをしながら探っていると、ふと先生は手を止めた

「先生?」
「おい、恵美奈。これ」
先生が指さした先の草むらは、不自然に草が生えてない部分があった
「獣道だ。もしかしたらなんかあるかもしれねぇ。ちょっとまってろ」
「気を付けてくださいね」

それから5分ほどすると、先生は帰ってきた
「恵美奈、こっち」
「?」
先生に誘われるままに茂みをかき分けてすすんでいくと、そこにみえたのは、猫の親子
依頼人の猫に間違いなかったが、その足元には子猫が戯れていた
「……黙っとくか」
「そうですね」
私たちは頷いた

帰り道につく私たち
忙しい日はこれで終わった
そう思った

「キャー!」
その声が聞こえるまで