バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

「黒瀬英介」という存在

「黒瀬英介」という言葉は一個人を指す名詞ではない

最初に存在が確認されたのは、とある屋敷に現れた怪物を倒した男だった
力を持たず、拳銃の腕だけでのし上がった刑事である

以後、様々な世界に同じ存在を観測
多少世界の誤差はあれど、皆同じ姿に同じ力を秘めていた

「黒瀬英介」とは平均的な背格好をした男性である
まとまる程度に長い黒髪に黄土色のコートを着用
(世界によっては青いジャージを着ていることもある)
体内に精神で押さえつけている白い悪魔を備えている
この白い悪魔は大した力を持っていない無名の悪魔だが、拳銃の扱いに長ける

「黒瀬英介」の人柄について問うと、皆一様に「いい人だ」と返してくる
当たり障りのない、しかし無表情やしかめ面が多い男性
世界によっては年下の恋人を連れていることがある
しかしその当たり障りのなさ故に存在感はほぼ皆無
彼の活躍が伝えられることはない

もう一度言う
「黒瀬英介」という言葉は一個人を指す名詞ではない

一番厳しい世界にいる彼は
ジャージに帽子、ヘアピンとメッシュを備え
大罪人の烙印を押され生活する刑事である