バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

『構ってよ』:青

江戸紫と外で食事をするのは久しぶりだ。

食事は食事、お喋りはお喋りとちゃんと気持ちを切り替えるのはマナーのいい証拠か。とはいえ僕があまりしゃべらないので仕事の愚痴から交友関係まで、いろんな話を聞いた気がする。

だが、結局食後のバーにまでついてきてしまった。江戸紫は酒には強いが少々面倒な酔い方をする。ほら、今もこうして上目遣いでこちらを見ている。

構わずカクテルを流し込んでいたら、服の裾を引っ張られた。テーブルに転がりながら彼女は言う。

「ねぇ、構ってよ」

幼馴染の特権だ。これが違う人間だったら真っ先に置いて帰っていた。

僕はため息を吐くと、「はいはい」と言いながら背中をなでる。「そうじゃない」と江戸紫が怒った。どうしろっていうんだ。まったく。