バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

64 残る禍根

「やはり罪悪感を感じてしまいますね」
窓からの景色を見下ろしながらルソーは呟いた
視線の先には一人で帰路につくコマチ。気丈にふるまっているが一挙動毎に不安が現れている

「人を殺すときは何も思わねェくせにな。おっそろしい奴」
それを傍らで眺めながらハシモトが返した
反り返ったタバコから灰が床に落ちる
「仕事だと割り切ってますからね」
ルソーは窓から離れた

「それで? あの後あの事件記者から連絡はあったのかよ」
「一度だけ電話がかかってきました。密着取材を切り上げるとの旨で、それ以降連絡はありません」
「そりゃそうだよなァ。暫くしたら連絡も来るようになるだろうけど」
本当、お気の毒だよなァ。そう言ってハシモトは灰皿にタバコを押し付けた

「ところでルソー、次の仕事なんだが」
「貴方もよくそんなに依頼をまわしてきますね。次はなんなんです?」
ルソーはふっと息を吐きながらハシモトに近づいた



「あら、コマチちゃん」
「!」
一方、コマチは商店街でフブキにばったりと出会っていた
傍らにはアイラもいる。見たことのない大きな人物が立っていただけで、コマチは軽く身震いした

「どうしたの? 元気ないわね」
フブキの声に、一瞬彼女に何か言いそうになったが、その言葉をコマチはこらえ、ただ「大丈夫です」と答えた
「そんなことより、フブキさん」
コマチは声を低くして言う
「ルソー君、普段通りなんですか」
「? 別に、変わったところはないわよ」
「そう、ですか……」
それだけ呟くと、コマチは「失礼します」と言ってそそくさと立ち去った

「……変ね。大丈夫かしら」
フブキの言葉に、横にいたアイラは眉間にしわを寄せた
ルソーの作戦が功を奏した。そう聞けばいい響きなのだが、どこにどう結果がもたらされるか分からないことを悟らされた