バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

【LWS創作】進みすぎた刻・2

「要するにさ、私らの世代が「なかったこと」になれば安寧だって、政府は思ってるんだよね」
シフォンケーキをむしゃむしゃと頬張りながらチームメイトは言う
自分たちの過ちをなかったことにしたい。その気持ちはわかる
けど、その「過ち」はあまりにも大きすぎて、収拾がつかなくなってるのだろう

「下手をしたら、大戦争を招きかねない、ということですね」
「その前に政権が変わればいいんだろうけど、そうもうまくいかないだろうし」
僕はケーキを食べながら、ただじっとチームメイトを見ていた
一番下の僕は何をすればいいのか分からず、聞いてることしか出来ないのが本音だった

「もう、うだうだいったってしかたないじゃない!」
ガタン、とチームメイトの一人が立ち上がった
「早く計画をたてて、主張しなきゃ! こんなことしているのに、納得いかないって!」
「そうだな。黙ってたら何も始まらねぇ」
「いい案が浮かべばいいんですが」

「やめておいた方がいいぞ」
チームメイトの士気があがるのを、不意に止めた人物がいた
全員がそちらを向く。そこには、やはり窓から空を眺めるチームメイトの一人、大黒屋さんの姿があった

「海、愛、大地。お前らの言いたいことも分かるが、今は耐えるしかないんだよ」
「何をいってるんすか、大黒屋さん! このまま指をくわえて眺めていろというんすか!」
「そうじゃない。俺だって政府のやり方に不満があるから、このチームにいる」
だが、と大黒屋さんはようやく視線をこちらに向けて言った
「今、この少人数じゃ、全員殺されて終わりだ。そう言ってるんだよ」

「でも、私たちだって、何かしないと、周りが」
「周りに対する劣等感ごときで動くのか」
大黒屋さんは立ち上がった。そうして僕らの横を抜け、扉に向かう
「今はまだ早い。そう言ってるだけだ。焦るんじゃねぇ。焦れば、先に死ぬ」
それだけ残し、彼は扉の向こうへ行ってしまった